絶滅の恐れがあるカモシカの一種「サイガ」について

サイガは絶滅の危機に瀕していますが、その脅威は違法な密猟だけではありません。過去20年の間に、全サイガの90%以上が減少したと言われているのです。
絶滅の恐れがあるカモシカの一種「サイガ」について

最後の更新: 30 7月, 2019

サイガは、近年その数が急激に減少した動物で、世界中の科学者たちは、絶滅の危機から守るために精力的に保護活動に取り組んでいます。

サイガはカモシカの一種で、中央アジアの草原や半乾燥地域に住み、一年を通じて、カザフスタン、モンゴル、ロシア南部、トルクメニスタン、そしてウズベキスタンを通り、平均で平均950kmの距離を移動します。

一般的に北から南、または南から北へ移動しますが、遊牧民のような不規則な移動を観察した研究者もいます。

サイガの外観的な特徴の一つが肥大化した鼻孔で、空気をろ過する働きを持っています。この魅惑的な進化の産物である、鼻孔を含む大きくて柔軟な鼻は複雑な内部構造を持っているのです。

移動の際に、空気をろ過して汚れなどが肺に入るのを防いだり、冬には寒い空気が肺に到達しないよう鼻がまず空気を温めるため、より安定した体温を維持できるのです。

水辺に立つサイガ 絶滅 サイガ

春が来ると、何十年も変わらず、常に背の高い草が生えている広い牧草地である交配場所へと移動します。

残念ながら、違法な密猟は依然としてサイガにとって大きな脅威で、闇市場などでは非常に高い値段で売られています。

その中でも中国では、サイガの角が重要な伝統的な価値を持っています。

サイガの大量死

野生生物保護団体にとって、違法な密猟だけがサイガの脅威ではありません。

数年にも渡ってサイガの90%以上がいなくなった静かなる敵がいます。2015年には、およそ20万匹のサイガがわずか数日で突然死を遂げました。

カザフスタンの大草原に沿って大量のサイガが理由もなく死んでしまったため、研究者たちは恐怖さえ感じたと話しています。

サイガはいつもの交配場所にいましたが、獣医師、動物学者、生態学者などのさまざまな分野の専門家たちも、このような突然死はかつて見たことがないと語ります。

草原に立つ一匹のサイガ 絶滅 サイガ

いくつかの分析の結果、研究者らは、サイガの死因は血流中で起こった重度の細菌感染であることを発見しました。

この感染は、重度の内出血、敗血症、または細菌性血液中毒を引き起こしたのです。

最近の研究によると、致死的な細菌の蔓延は当時の気候によって引き起こされていたため、以前の研究と合わせて、研究者たちは驚くべき結論に達しました。

2015年には、膨大な数のサイガアンテロープが短期間で死ぬという出来事がありましたが、このとき以外にも、何回か大量の突然死が起きています。

様々な証拠から、専門家たちはある気象条件が共通していることに気づきました。

「暑い気候が、広範囲の病気をもたらしたのか?」

地球規模の気候変動、移動、および感染症

近年の気候の変動は、世界中の人々や多くの政府を悩ませている問題の一つです。

そして気候変動は、人間だけでなく動物をはじめとする地球の生き物すべてに影響を与え始めていることを覚えておくべきでしょう。

産業革命以降、気候の変動が加速し、世界中の動植物が深刻な悪影響を受けています

気温の上昇をはじめとする気候の変化は、様々な種の動物が、生存により適した地域へと移動することを余儀なくしました。

高齢のサイガ 絶滅 サイガ

世界中のたくさんの動植物が、寒い気候を持つ地域に移動することで、気温の上昇に対応していますが、これは多くの病気を運ぶ昆虫もまた移動していることを意味します。

気温が上がり、気候パターンが変わると、雨の時期とそのパターンも変化します。

例えば、熱帯地域で雨季に主に起こる、蚊を媒介とした病気は制御不能になり始めています。

地球の温暖化

地球が温暖化すると、病気が広がるのに最適な環境を与えてしまうと専門家は指摘します。

これは、感染症の原因となる細菌は、暖かく湿気の多い場所ではより速いスピードで増殖するからです。

気温の上昇や雨が降るパターンの変化は、それぞれの動物が変化にどれだけ耐えることができるかによって、異なる方法で各動物に影響を与えます。

サイガの場合、彼らの大量死の原因となっているバクテリアが鼻孔に発見されており、現在では、これらの細菌の急速な増殖を引き起こしたのは気温の上昇であると専門家は指摘しています。

私たち人間が、サイガのような絶滅危機にある種を助けたいのであれば、地球温暖化の原因となる環境破壊を真摯に捉え、環境保護に務めることが大切です。

今回ご紹介したサイガの例は、気候変動により絶滅の危機に瀕している多くの種の一つに過ぎません。


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  • Kock, R.; Orynbayev, M.: Robinson, S. (2018) Saigas on the brink: Multidisciplinary analysis of the factors influencing mass mortality events. Science Advances, Vo. 4.
  • Altizer, S.; Ostfeld, R. (2013) Climate Change and Infectious Diseases: From Evidence to a Predictive Framework. Science, Vol. 341.

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