【岩を食べる軟体動物】川の流れも変えてしまうリソレド・アバタニカ

アメリカの生物学研究チームは、フィリピンのボホール島のアバタン川で川底の岩を食べるフナムシに似ている新種の軟体動物を発見しました。岩石から栄養分を取るこの動物にはどのような消化器官があるのでしょうか。
【岩を食べる軟体動物】川の流れも変えてしまうリソレド・アバタニカ

最後の更新: 02 4月, 2021

リソレド・アバタニカは、非常に特殊な食性を持つ不思議な淡水軟体動物です。世界でも類を見ないこの動物は、石灰岩を食べて砂岩として排泄することが観察されています。

学名リソレド・アバタニカ(Lithoredo abatanica)は、フナクイムシの仲間と考えられていますが、これまで専門家はフナクイムシを「木食性」と表現してきました。

フナクイムシは紀元前4世紀ごろから文献に記載されており、船乗りの“惨劇”として知られています。現在でも木材を食べる習性があるため、船や波止場には甚大な被害をもたらしています。

木ではなく石灰岩を餌にするリソレド・アバタニカ

他のフナムシとは異なり、リソレド・アバタニカは淡水に生息しています。フィリピンのアバタン川の石灰岩に生息していることが報告されたのはここ数年のことです。

リソレド・アバタニカが木ではなく、石灰岩を餌にしているということで他のフナクイムシと区別ができます。岩を食べると岩は内臓に溜まり、粉砕された後に細かい砂として排泄されます。

手のひらの上のリソレド・アバタニカ 岩を食べる軟体動物

この“岩虫”の特徴は非常にユニークで、専門家はこの生き物を新種として分類しただけでなく、フナクイムシ科の新種として分類する必要がありました。

岩に穴をあけて餌にするというのは、これまでの動物界では類を見ない驚くべきメカニズムであります。

「フナクイムシ」の名は語弊がある

「フナクイムシ」という名前には「ムシ」がついていますが、虫ではありません。フナクイムシ科(Teredinidae)に属す二枚貝類の総称で、アサリやシジミなどの二枚貝の仲間です。フナクイムシは、ミミズのように長い体の一端に小さな2枚の貝殻が付いています。

この新種の殻はその細長い体を保護するものではなく、道具として使うために進化し、岩石の表面をゴリゴリと掘ることができるようになっています。

このドリルのような貝殻は、石灰岩に穴を開ける作業に適応したもので、何十本もの小さな歯があります。この歯を使って石灰岩を砕き、摂取できるようになっているのです。

岩の中にいるリソレド・アバタニカ

仲良く食べるリソレド・アバタニカ

  • リソレド・アバタニカは、フナクイムシ科のエントツガイ (Kuphus polythalamia)の仲間でもあります。エントツガイの体長は約152cmあり、泥の中に生息しています。研究者はフィリピンの沖合の水深約3mに生息しているのを見つけました。
  • エントツガイは過酷な環境に生息しています。有機物が多く、硫黄に由来するガスである硫化水素を大量に排出する泥の中に暮らしているのです。そして、エラに共生しているバクテリアを利用して栄養分を得ています。これらのバクテリアは硫黄を酸化させ、エントツガイが食べられる化合物を作り出します。

石灰岩を食べる意味は?

研究者は、リソレド・アバタニカが岩石そのものから栄養を得ているのではなく、ある種のバクテリアとの共存関係から栄養を得ているのではないかと推測しています。

エラや砂岩を排泄するサイフォン(管)に生息するユニークなバクテリアが代謝産物を作り出し、それをリソレド・アバタニカが利用しているのではないかと考えられます。

また、専門家は腸内の岩石の粒子が、鳥の砂肝の働きに似て、オキアミなどの食物をすりつぶすのに役立つのではないかと指摘しています。

リソレド・アバタニカ 岩を食べる軟体動物

河川生態系の技術者リソレド・アバタニカ

リソレド・アバタニカの穴を掘る習性は、河川の生態系を形成し、新たな生息地を形成する上で重要な役割を果たしている可能性があります。フナクイムシの場合、フナクイムシが掘った迷路のようなトンネルは、魚や多くの海洋無脊椎動物の生息場になっていることが知られています。

このような意味で、リソレド・アバタニカの生態学的影響は、他のフナクイムシ科の生態学的影響と一致しています。これを裏付ける要因は2つあります。

  • 岩盤に生息する多くの動物:複雑な巣穴に数種類の無脊椎動物が生息していることが専門家により発見されました。
  • アバタン川の土手に散らばる石灰性物質の多さ

このように、リソレド・アバタニカの存在は、多くの異なる種の生息地を複雑化し、アバタン川の流れを変えている可能性が高いのです。

自然の秘密

新たに発見されたリソレド・アバタニカに関しては、まだ多くの謎があります。生態学的な習性を研究すれば、同じ環境にいる他の生物がリソレド・アバタニカの作るトンネルにどのように依存しているかについて多くのことが分かるはずです。

リソレド・アバタニカが岩に作る穴は何百万年も残るため、その重要性は非常に大きなものになるでしょう。リソレド・アバタニカという新種の理解は、河川の生態系の進化にも光を当てることに繋がるのかもしれません。

最後に、リソレド・アバタニカが岩石を消化する特殊なバクテリアの宿主であるかを明らかにすることで、バイオテクノロジーの応用が期待されます。この知見は経済発展を促進する新たな製品に繋がる大きな可能性を秘めているのです。

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