イヌコロナウイルスについて知っておくべき5つのこと

今日は、イヌコロナウイルスとそれが今回のパンデミックにどう関係しているのかについてお話します。
イヌコロナウイルスについて知っておくべき5つのこと

最後の更新: 31 3月, 2020

現在世界中で新型コロナウイルスのニュースがあふれかえっています。新型コロナウイルスとイヌコロナウイルスにはどんな関係があるの疑問に思っている方も少なくないかもしれません。このウイルスはどこからやってくるのでしょう?そして、飼っているペットにリスクはあるのでしょうか?

この新型ウイルスの大流行については今だ答えられていない疑問がたくさんあります。イヌコロナウイルスについて知っておくべき5つのことをこの記事でお伝えすることで、読者の方の気持ちを落ち着かせられれば幸いです。

1.イヌコロナウイルスとは?

コロナウイルス(CoV)には約40もの系統ウイルスがあります。この微生物の名前の由来はその外皮の冠のような形をした構造にあります。一般的に、このウイルスは特定の種の哺乳類に感染します。ですので、科学者たちがネコ、ウサギ、フェレット、ウシ、シチメンチョウ、ブタなどに感染するそれぞれの型のコロナウイルスを特定してきています。

この型の中で、イヌに感染する恐れのある型には3つあり、それがイヌコロナウイルスとして知られているものです。それが“CCov Ⅰ”、“CCov Ⅱ”そして“CRCov”です。この“CC”という部分は「canine coronavirus(イヌコロナウイルス)」を指し、“CRC”の場合は「canine respiratory coronavirus(犬呼吸器コロナウイルス)」を意味します。

イヌコロナウイルス コロナウイルス

人間の場合、この系統のウイルスは普通の風邪のような症状を引き起こします。インフルエンザの感染の15%はコロナウイルス系統のものだと言われているのです。より深刻な病気としては、MERSコロナウイルス(MERS-Cov)や、SARSコロナウイルス(SERS-Cov)などがあります。武漢で始まりアウトブレイクを引き起こした今回のウイルスは、暫定的に2019新型コロナウイルスと呼ばれています。

2019新型コロナウイルスは新しいコロナウイルスの型で、人にはこれまで見られなかったものです。

2.人とペット間でウイルスは感染する?

これは多くの人がイヌコロナウイルスに関して抱く疑問の一つです。イヌやネコ、人間はコロナウイルスに属するウイルスに接触する可能性がありますが、一般的に感染するのは特定の種に限られています。ですので、異なる種の間で感染が起こることは稀です。

しかし、ウイルスは変異する能力を持っていることでよく知られているということを指摘しておくことも重要です。しかし普通は、変異したウイルスはその種の特性を維持します。ウイルスがこれだけ長い間地球上にありながら、人間を壊滅させていないのはこのためです。

非常に稀なことですが、変異することで異種間に感染が起こることもあります。

ウイルスの変異についての分析によると、MERS、SARS、そして2019新型コロナウイルスでさえも、その起源はコウモリにあると言われています。

こちらもお読みください:犬のコロナウイルス感染症について

3.イヌコロナウイルスの感染の深刻度は?

3つのイヌコロナウイルスが科学者によって認められています。その内の2つはグループ1に属し、下痢を引き起こすなど互いにとても似ています。それが“CCov Ⅰ”と“CCov Ⅱ”で、両方とも軽い症状のためあまり気づかれません。

イヌコロナウイルスの感染が初めて報告されたのは1974年でした。ドイツにある犬の軍事部隊で深刻な腸炎が見られたことで、ウイルスが特定されたのです。

2003年には、3つ目のイヌコロナウイルスが報告されました。“CRCov”はグループ2に属し、循環器系の問題を引き起こす、深刻にもなりえるウイルスです。感染すると肺炎を引き起こしたり死に至らしめる恐れもあります。これはひどく混雑した状況に暮らす犬に起こる可能性が高いものです。

“CRCov”によって引き起こされたアウトブレイクは非常に毒性が高く、汎親和性であるため、多くの臓器に影響を及ぼします。さらに、これは他の系統のウイルスと同様、犬伝染性気管気管支炎として知られる呼吸器系の感染症を引き起こします。

4.イヌコロナウイルスの感染頻度は?

さまざまな血清学やウイルス学の研究により、イヌコロナウイルスは犬の中にとても広く広まっているということがわかっています。特に、ケンネルや動物シェルターなどによく流行しています。

イヌコロナウイルスは腸に感染している罹患率が高いですが、致死率は高くありません。ウイルスは唾液やフンの中に多く出てくるため、糞口経路で広まります。

グループ2のケースについては、アメリカの研究で検査したイヌの50%が“CRCov”に対する抗体を持っていることが報告されています。これはこれまでの生活の中でこのウイルスにさらされたことがあるということを意味しています。

5.イヌコロナウイルスについて心配すべき?

その答えは「ノー」です。実際、グループ1のコロナウイルスについてはワクチンがあります。しかし、ほとんどの獣医さんは世界小動物獣医教会(WSAVA)の指示に従っています。感染は軽いものなので、ワクチンの使用を勧めていないのです。

汎親和性の“CRCov”が引き起こす感染については特別な治療法がありません。感染への対処法は、液体と電解質の適正なバランスを維持するためのサポート治療に焦点が当てられます。細菌の二次感染を治療するために、幅広い抗微生物剤が処方されることもあります。しかし、この治療法が勧められることはあまり一般的ではありません。

今だに汎親和性“CRCov”に対するワクチンはありません。イヌコロナウイルスに対して現在使われている不活性化ワクチンはほとんど効果がないことがわかっています。一番の予防法は、循環器系の感染症(パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ジステンパー、気管支敗血症菌)に対するワクチンを打つことです。さらに、犬伝染性気管気管支炎になっている犬は、症状が消えるまで隔離した方がいいでしょう。


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