【動物と時間知覚】動物にも時間の感覚はあるの?

06 11月, 2020
素早く飛び回るハエですが、実はハエにとって時間はのんびり流れていると示す研究結果があるのをご存じですか?その他にも素早い動作で知られる昆虫は、人間よりも時間の感覚が遅いのです。

動物にとっての時間の概念は、進化と生存の一つの側面であると科学者たちは考えています。例えば、冒頭にも登場したハエの場合、人間が感じているより約7倍も遅く時間が流れている感じているというのです。

ハチドリのように代謝速度の遅い小動物は、1単位の時間の中でより多くの情報を知覚しているといいます。つまり、人間のように新陳代謝がより悪く、身体の大きな動物よりも、出来事をゆっくりと経験しているというのです。

時間の感覚はどのように測る?

テレビやパソコンの画面、映画館のスクリーンはすべて光が点滅して映像を作り出しています。しかし、この光は高速で点滅しているため人間の目には途切れる画像ではなく、滑らかに動く映像として見えているのです。

これは「臨界融合周波数」と呼ばれ、点滅する光の頻度を高めると、光は「ちらつき」ではなく、滑らかな連続光として見え始めます。このようにして客観的には断続的な光が、一定に動く映像であるかのような“錯覚”を与えているのです。

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人間の時間の感覚

ドアをノックしたとしましょう。私たち人間は聴覚刺激、視覚刺激、触覚刺激を組み合わせたあらゆる情報を同時に知覚します。実際には、情報は異なるモダリティであり、同じ情報源(ドア)からのものであっても異なる経路で脳に到達します。

また、これらの情報が脳の“情報処理センター”に到達するタイミングは微妙に異なります。このことからも分かるように、私たちが「今ここ」を知覚するためには、脳が感覚運動の制御と情報処理を行わなければなりません。

これらの事実に基づいて、同時に発生しているように見えるが異なる感覚モダリティの解釈には、人間の脳に特有の情報処理が必要であると専門家は考えています。そして、このプロセスを通すことで私たち人間は時間の感覚を得ているのです。

他の動物の場合、その動物の感覚神経系が位置や速度に関する情報をどのように処理するかによって時間の感覚は変わってきます。

動物の時間の知覚:サイズは重要

ハエは人間の4倍の速さで点滅する光を感知することができます。ハエを叩き落すのが難しいのは、これが理由です。

人間の感じている“時間”は、ハエにとってはスローモーションの中で起こっていることのように認知されているため、叩きに来た手から逃げる時間は十分にあるのです。もちろん、実際の時間は同じ速度で流れています。

ハエの目は、人間の目よりもはるかに頻繁に脳に最新情報を送っていて、ハエの情報処理速度は人間よりもずっと速いのです。

また、動物は小さく、代謝速度が速いほど、時間の感覚が長いことが研究によって明らかになっています。

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研究された動物は、げっ歯類、ウサギ、トカゲ、ニワトリ、ハト、イヌ、ネコ、オサガメなど30種以上に及びます。

そして時間の感覚は、動物の身体の大きさに直接関係していることが示唆されています。

自然界では、「どの“スケール”で時間を感じているか」が生死の分かれ目になることがあるため、これらの研究により明らかになった動物によって異なる時間の感覚には重要性があります。

“秘密のコミュニケーション方法”の利点とは

どんな生物にとっても生態学とは、他の種にはないニッチ(生態的地位)を見つけ、そこで生き延びることです。

多くの動物の聴覚器は人間の耳には聞こえない周波数を知覚できます。同様に、種によって異なる時間の感覚の差を利用し、自分たちを有利な立場に置くことができる動物もいます。

例えば、ホタルや深海生物のような種は、点滅する光を信号として使っています。身体が大きく、動きの遅い捕食動物は、これらの信号を“理解できない”可能性があります。

捕食動物の視覚神経系がその光の信号の速さに適応していない場合、ホタルや深海生物にとってこの視覚的な通信形態は“秘密のコミュニケーション方法”になるのです。

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まとめ

動物の時間の感覚については未だ解明されていないことが多く存在します。今回ご紹介した研究は、ある種が特化しているかもしれない殆ど未開拓の次元を垣間見たにすぎません。

動物が“スローモーション”の技をどのように使っているかを理解するためには、さらなる研究が必要です。ひょっとすると、人間の目には知覚できない一面を持つ動物の存在が明らかになるのかもしれません。

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