フォンゴリに住む槍を持ったチンパンジー:人間との共通点

31 12月, 2019
セネガルのフォンゴリのチンパンジーは、槍を使ってガラゴ(夜行性の小型霊長類)などの小さな哺乳類の狩りを行います。槍を自ら研ぐというチンパンジーとして極めて珍しい行動も見せるのです。
 

霊長類は、槍(やり)という道具を使うことのできる数少ない種の1つに属します。しかし、槍を使って狩りを行うフォンゴリのチンパンジーは特別なケースです。他のチンパンジーとは異なるフォンゴリのチンパンジーは、神秘的なことに人間とも似ている点があります。

動物にも社会というものは存在し、霊長類、クジラ類、そして一部の鳥には代々伝わる行動パターンがあります。そして、この行動パターンが同じ種の他の動物との違いを生み出しているのです。

フォンゴリの槍を持つチンパンジー

フォンゴリのチンパンジーは、狩りに槍を使うため非常に特殊な霊長類と言っても過言ではありません。道具を使った狩りは人間に見られる行動であり、他のチンパンジーでは見られないため驚くべきことです。

フォンゴリはセネガルの温かい地域です。コンゴの深い森から離れていて、この驚くべきチンパンジーの生息地でもあります。この社会的変化の結果として、このチンパンジーが初めて人間の生態系に非常によく似た生態系に適応した理由なのかもしれません。

チンパンジーが狩りに鋭い武器を使うことが発見されたとき世界は驚きました。このチンパンジーは、ガラゴという夜行性の小型霊長類や他の小さい哺乳類を捕まえる際、自ら研いだフォンゴリの槍を使うのです。

槍 チンパンジー 
 

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フォンゴリのチンパンジーは槍を使うだけではない

フォンゴリのチンパンジーが他のチンパンジー社会と異なる点は、狩りに槍を使うだけではありません。フォンゴリのチンパンジーは他のチンパンジーより寛容であり、狩りに関しては雄と雌でより平等なことが分かっています。また、肉体的な力を利用することは少なく、体の大きい雄だけがボスになるわけでもありません。

しかし、フォンゴリではボスとして群れを率いていたフォウドウコが殺されるといった残虐な事件も起きています。

フォウドウコは、フォンゴリ地域のチンパンジー社会のアルファ雄として君臨しました。2年間ボスの座に就きますが、群れの中で反乱が起こりボスの座から引きずり降ろされると、フォンゴリの外れに追いやられてしまうのです。

5年もの月日が経ったある日、フォウドウコは群れに戻ろうと仲間に近寄りますが、その夜に無残にも殺されるのです。そして、群れの雌により共食いという類人猿では通常あり得ないことが起きたのです。

なぜフォンゴリのチンパンジーは槍を使うようになったのか

人間以外で狩りに槍を使う動物は、フォンゴリのチンパンジーのみです。

しかし、他にも道具を使って狩りをする動物は存在します。前述のようにフォンゴリのチンパンジー社会では雄と雌が平等であり、雌も狩りを雄と同様に行います。これは、他のチンパンジー社会では見ないことです。

これは恐らく、槍を狩りに使うフォンゴリのチンパンジーは、力任せに狩りを行う他のチンパンジーよりも独立心が高いからでしょう。例をとると、ジェーン・グードルにより研究されたゴンべのチンパンジーは、雄が獲物の9割を捕まえますが、フォンゴリでは7割程度です。

 
槍 チンパンジー 

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フォンゴリでは、雌や地位の低い雄であっても食物を奪うことはあまり起きませんが、他のチンパンジー社会ではしばしば起きることです。このことと槍を使用するということが、フォンゴリの雌チンパンジーの狩猟本能を目覚めさせ、それを高度に発達させたと考えられます。

槍を使うチンパンジーと人間

セネガルのサバンナは最初の人間が住んでいた環境によく似た生息地です。驚くことに、フォンゴリの槍を使うチンパンジーは、かつての野生的な人間の過去を彷彿させるのです。

フォンゴリのチンパンジーは単に槍を使うだけではありません。木の上にいる時間より、地面の上にいる時間の方がはるかに長いのです。これは人間の進化の過程とも似ています。

このチンパンジーの狩りの技術を理解するには、映像を見るだけでは不可能です。

フォンゴリのチンパンジーは、先を尖らせた棒を持ちガラゴの巣へ押し入ります。目的は獲物を一刺しで射止めることなのです。

槍を持つチンパンジー、最初の穴居人

フォンゴリのチンパンジーと人間の類似点はこれだけではありません。セネガルの気温と乾燥した気候は、フォンゴリのチンパンジーに他のチンパンジーが立ち入ったことのない洞窟に避難することを余儀なくさせました。洞窟の中は温度と湿度がはるかにしのぎやすい環境なのです。

 

他のチンパンジー種はこのようなことは行わないため、フォンゴリのチンパンジー社会がどれほど特別なのかお分かりいただけるのではないでしょうか。同じ種であっても、人間と同様に、槍を使うか使わないかで大きく行動が変わるのです。