体罰を使わない犬のポジティブ・トレーニングについて

27 3月, 2020
愛犬には恐れからではなく、自らの意思で行動を起こし、幸せになってほしいものです。そして、それを可能にする唯一の方法は痛みや恐怖を用いらないテクニックなのです。
 

愛犬の問題行動をどのように対処していいかわからない場合、ドッグトレーナーの力を借りる必要があります。多くのドッグトレーナーは自らを“ポジティブ・トレーナー”と名乗りますが、この言葉の意味を理解している人は少ないのが現状です。今回の記事では、犬のポジティブ・トレーニングについて詳しくみていきましょう。

 

トレーニングとハンドリング

犬の行動に関しての専門家にはドッグトレーナー、ハンドラー、動物行動学者の3種類が存在します。

  • 動物行動学者とは獣医の知識を持つ専門家です。彼らは地球上のすべての動物の行動に精通していますが、クリニックにいる専門家は家庭でのペットに特化しています。
  • ハンドラーは犬がどのような状況にあってもコマンド(命令)に従うように犬をしつけます。たとえば、薬物探知犬を訓練するのはハンドラーの仕事です。覚えたコマンドは、たとえ空港、自宅、人込み、誰もいない場所であっても指示が出されれば犬は毎回同じように従います。
  • トレーナーは問題行動に取り組みます。犬の生活を観察し、家族が問題と捉える行動がどこから生じているかを見つけ出します。根本的な問題を見つけ、対処するのがトレーナーの役割です。
強化の理論
 

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この3つ職業は似ていると同時に大きく異なります。ケースバイケースでベストな結果をもたらせるよう、それぞれが特化されています。他の多くの職業のように、アプローチにはあらゆるものがあり、“ポジティブ”なアプローチもその一つです。詳しく見ていきましょう。

犬のトレーニングの歴史

この職業は比較的新しいもので、特にハンドラーの歴史は100年以内と浅く、約50年前にしつけの分類に位置づけられました。しかし、動物の行動を専門とする動物行動学という職業はそれよりも前から存在しています。しかし、初期はペットではなく、野生動物に焦点を当てていました。

ハンドラーとドッグトレーナーは、当初は体罰を用いりながらしつけを行っていました。たとえば、俳優犬を扱う場合は求められる演技を教えるために体罰を用いていました。つまり、犬は指示に従わないことで与えられる体罰を避けるために働いていたのです。

その後まもなく、より人道的でより速い学習を可能とするテクニックが生み出されます。ドッグトレーナーは罰の代わりに指示に従った際、犬にご褒美を与えるようにしたのです。犬を叱ることなく、頑張ろうという気にさせることができるようになりました。このテクニックは、現在でも水族館のショーで活躍するイルカの調教など他の動物の訓練にも使われています。

犬 ポジティブ・トレーニング 
 

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米国心理学者で行動分析学の創始者スキナーは、この報酬を“正の強化”と呼びました。そして、罰の代わりに報酬を与えるハンドラーやドッグトレーナーは“ポジティブ”トレーナーと呼ばれるようになりました

“ポジティブ・トレーニング”は誤解を生む表現

ポジティブ・トレーニングは犬に害を与えないことを目的としています。罰は、ベルトやムチで叩く・蹴るなどの身体的なものや、声を荒げる・隔離といった心理的なものであっても犬に害を与えます。

一方で、ポジティブ・トレーニングは犬に相応しい行動を起こす気にさせ、そうした際にはご褒美を与えます。犬は人間を喜ばせることが本質的に好きであり、自らの意思でコマンドに従うようになります。

体罰を用いるしつけは“従来の手法”と呼ばれる一方で、犬に敬意を持って接するしつけは“ポジティブ・トレーニング”と呼ばれるようになりました。違いは明白でありながらも、この2つの用語は間違えられるようになるのです。なぜでしょうか。

愛犬に体罰を与えるドッグトレーナーにしつけを任せたいと思う人は少ないため、“従来の手法”を用いるドッグトレーナーはご褒美を訓練に取り入れるようになります。しかし、体罰をなくしたわけではありませんでした。

今日、多くのハンドラーとドッグトレーナーは、報酬と罰の2つのテクニックを組み合わせています。犬は体罰を受けないように、そしてご褒美がもらえるようにと行動するのです。

“ポジティブ・トレーニング”は誤解を生む表現というのはこれを意味しています。ハンドラーが自らを“ポジティブ”と呼んでいても、必ずしも犬に体罰を与えないわけではないのです。愛犬が敬意を持って接してもらえているかを確認するのは、もはや飼い主の役目なのです。

 

問題行動の原因としての痛み

正の強化はどんな動物に対しても問題解決を促し、学習を加速することが明らかになっています。それに対して体罰は犬を混乱させ、学習から遠ざけます。痛みを用いることで犬と人間の家族との絆にひびが入ってしまいます。覚えようとしている行動と痛みを関連付けて覚えてしまうのです。

スパイク首輪、チョークチェーン首輪、電気ショック首輪はすべてそれに分類されます。このようなテクニックは問題を一時的に隠すだけで解決には導かないことが分かっていて、犬を不安定にさせ予測不能な行動を招くだけです。

犬と体罰 犬 ポジティブ・トレーニング 

愛犬には恐れからではなく、自らの意思で行動を起こし、幸せになってほしいものです。そして、それを可能にする唯一の方法は痛みや恐怖を用いらないテクニックなのです。

ポジティブ・トレーニングを行う専門家を見極める方法とは

“ポジティブ・トレーニング”という用語は、訓練に正の強化だけが使われることを保証するわけではありません。誤解を招く用語のため、ドッグトレーナーを雇う際は慎重に選ぶ必要があります。しつけを依頼する前には必ずトレーナーと話をして質問をし、信頼できると感じた時だけ依頼をするようにしましょう。

 

注意するポイントには次のようなものが挙げられます。

  • あなたに耳を傾け、あなたや愛犬、そして愛犬の問題行動にも敬意を示していると感じられるか
  • リードを引っ張らない、犬を押したり叩いたりしていないか
  • あなたの状況に合った解決法やガイドラインを提供してくれるか
  • スパイク首輪・チョークチェーン首輪・電気ショック首輪を使っていないか
  • 支配理論ではなく、科学的根拠の基づいて訓練を行っているか