ある宇宙飛行士とその飼い犬の物語

ある宇宙飛行士とその飼い犬の物語

最後の更新: 06 9月, 2018

誰もやったことのない「何か」を成し遂げたお話は話題になりやすいものです。今回は、どうしても自分の公式写真を、愛する飼い犬たちと一緒に撮りたかった、ある宇宙飛行士の物語をご紹介します。

ある一人の宇宙飛行士

彼の名前はリーランド・メルヴィン。NASA60年の歴史の中でも屈指の有名宇宙飛行士です。いくつかのミッションに参加し、合計565時間もの宇宙空間での生活をこなしてきました。しかし、この偉大な記録のおかげで彼は有名人になった、というわけではないのです。むしろなぜか誰もこの記録のことなど気に留めませんでした。本当に彼を有名にしたもの、それは「愛犬と一緒に写真を撮った」という、ほんの些細なことだったのです。

リーランドと飼い犬

国のための宇宙研究に貢献する人間であるとして認識されるために、すべての宇宙飛行士は公式写真撮影します。

一人で写らないといけないと決まっているわけではないため、家族や、愛する人と共に写真を撮る人もいます。しかしリーランドは、彼の飼い犬たちと一緒に撮影することにしたのです。まず、その理由はなんだったのでしょうか?

リーランドは次のように語りました。

「一緒に写真を撮るとなれば誰もが家族を選ぶでしょ。でも当時は結婚してなかったし、両親たちはヴァージニアにいて遠かったから、『うちの子たちを連れて行っても何も問題ないだろ?』って思ったんだ。」

このコメントは、ハフィントン・ポストによるインタビューに対する、彼の答えでした。

2009年に撮影されたこの写真は、2015年になるまで世間に知られることはありませんでした。あるジャーナリストが発見し公開したときには、すぐにインターネット上で話題になり、24時間で52,000リツイートを記録したと言います。

彼とその「家族」との間の良い関係性が垣間見える、素晴らしい写真なのです。

出会い

写真を撮る数年前に、リーランドは2匹の犬を引き取りました。1匹目のジェイクは捨てられていたところを助け、最初の家族となりました。2匹目のスカウトは、首輪もチップもつけずに道端をうろついていたため一度預かったものの、飼い主が現れなかったため飼い始めることにしたのです。

これがこの美しい家族ができあがった瞬間です。

動物との写真

犬たちにポーズをとらせて写真を撮ることがとても難しいのは、ペットを飼ったことがある人なら分かると思います。しかもそれをNASAでなんて、どうやって撮影したのでしょうか。

動物が施設の中に入ることは許されていません。しかしリーランドはどうしても家族である犬たちと共に写真を撮りたかったため、自家用ヴァンの中に入れて、吠えてもバレないように音楽を大音量でかけて、侵入したのです。セキュリティも彼のバッジを見せるだけで通ることができました。

撮影ができる場所に着いたら犬たちには大好きな骨を与えました。大きな音を立てることもなく、幸せそうに遊んでいたようです。それが終わると、飼い主に感謝の気持ちを伝えようと2匹はリーランドのもとに寄っていきました。その瞬間、リーランドはカメラマンに、「今だ! 撮ってくれ!」と言ったそうです。

公式のものにするのであれば犬もまっすぐカメラを向いて、キレイに並んで座っている写真の方が良い、と思ってしまいますが、彼はあえてじゃれ合っているところを写した写真を選ぶことで、家族3人の強い絆を表現しました。

残念ながらジェイクとスカウトは既に亡くなってしまいましたが、この写真のことをリーランドが誇りに思っていることは間違いないでしょう。


このテキストは情報提供のみを目的としており、専門家との相談を代替するものではありません。疑問がある場合は、専門家に相談してください。