グレートバリアリーフに暮らすピンク色のマンタ

世界で唯一知られているピンク色のマンタは、2015年に初めて姿を捕らえられました。(訳者注:worldのdがsになっており、ピリオドがカンマになっています)この美しく、「クルーゾー警部」という通り名を持ったマンタは、それ以来10回も人の前に現れていません。
グレートバリアリーフに暮らすピンク色のマンタ

最後の更新: 05 7月, 2021

2020年、唯一知られているピンク色のマンタがその最新の姿を見せました。これは、オーストラリアのグレートバリアリーフの南端にあるレディーエリオット島付近で、写真家のクリスチャン・レインさんがスキューバダイビングを行っていた際に撮影したものです。

短期間でレインさんの写真はソーシャルメディアで大きな話題になり、このマンタへの好奇心が再燃しました。それも無理はありません。2015年に初めて見つかってから、このマンタは科学者も存在を確認できていなかったからです。

この有名なピンクのマンタはオニイトマキエイ属のManta alfrediに属します。これは世界で2番目に大きなマンタの種だとされています。

このマンタには「クルーゾー警部」というニックネームがついています。これはピンクパンサーシリーズの有名なキャラクターからとったものです。

なぜピンク色をしているのか?

自然界で見つかるピンクやオレンジ、黄色といった色は、カロチノイド色素が関わっています。そして、少なくともほとんどの動物においてはこの分子を消化を通して摂取しているとされています。例えば、ピンクのフラミンゴは小さな甲殻類を食べることで体の色がピンクになっています。このことから、ピンク色のマンタも食事によってこういった色になったのだと初めは考えられていました。

カロチノイド色素

フラミンゴの羽根の色がピンク色なのは、エビや貝などに含まれるカロチノイド色素のためです。

ピンク色のマンタの新しい模様はピンクと黒

このサンゴ礁に住んでいるマンタの色は一般的に3つのパターンがあるということにも触れておきましょう。黒、白、そして白黒のものがいるのです。この3つ目の色のものが最も多いのですが、背中が黒く腹が白くなっています。

ですので、上から見るとその黒い背中が体の下にある暗い水と一体化します。また、下から見ると薄い色の腹が太陽の明るい光で照らされた海の表面となじむようになっているのです。ですので、白黒のマンタにはサメなどの敵から身を守る上で最も大きなアドバンテージがあるのです。

ピンク色のマンタ
画像:National Geographic – Kristian Laine

動物の色にはどんな意味があるのか?

一般的に、動物の生活のさまざまな面において色は重要な役割を果たします。すでに触れたように、捕食者から視覚的に身を守ってくれたりするからです。

また、多くの場合動物の色は価値のある情報を提供してくれます。例えば、動物の性別、体の状態、成熟度、または生殖機能があるかどうかなどがわかるのです。そのため、異常がある場合は自然淘汰されていく傾向にあります。

ですが、このピンク色のマンタのように、ある個体や場合によっては種全体が異常な色になるという例もいくつかあります。その色のおかげで、生き残ったり生殖活動ができたりすることがあるのです。

ピンク色のマンタの色は異常なのか?

そう、これも動物王国で見つかった色の以上の一例なのです。用語体系はまだ合意に至っていませんが、色の異常は12以上も存在します。これには色素欠乏症、黒色素過多症、白変種、赤髪症などが含まれます。最後のものは最も珍しいものの一つでしょう。

赤髪症は、動物において発生する色の異常で、赤やオレンジの色素(赤色素胞)が異常生成され、さまざまなトーンや濃さを作り出していることを指します。

異常が動物のアドバンテージとなることはあるか?

最もよくある、体全体が真っ黒になる黒色素過多症を持つ個体には、熱に関するアドバンテージがあります。これは体の色が暗いことで、より優れた体温調節機能を持つことができるからです。また、捕食される危険も少なくなります。

色を持たない色素欠乏症や白変種も、よくある色の異常です。間違いなく、こういった異常を持つ個体は生存率が下がります。

赤髪症に関しては、生存メカニズムや体温調節で有利な点があるのかどうかについてのデータがありません。サンショウウオ(Plethodon cinereus)を使った実験では、鳥が赤髪症の個体を選択的に避けたということはわかっています。

ピンク色のマンタ
画像:National Geographic – Kristian Laine

なぜピンク色なのか?

これまで、海洋生物の色には3つの色素胞が影響しているとされてきました。

  • 黒色素胞(黒や茶色の色素の細胞)
  • 黄色素胞(黄色や赤の色素の細胞)
  • 虹色素胞(光の当たり方によってさまざまな色に変化する、反射的な明るさを作る)

一般的に、色の異常は遺伝子変異の結果であることが多いものです。この変化は発達、色素胞の配分、または色素の生成に影響します。

しかし、カロチノイド(赤の色素)の移動、配置、処理に重要な遺伝子の特定は困難を極めています。これは、メラニン形成(黒)に関わるとても特徴的な遺伝子とは違うのです。

いずれにしても、これまで海洋生物の色の異常の適応的な進化に関しては過小評価されてきました。赤っぽい色が出るという現象についての研究は、さらに調査が必要なのです。

※カバー画像はクリスチャン・レインさん撮影のもの。


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