【科学的に実証されました!】高齢者と犬の共生を考える

犬を飼うことで得られるメリットは多いですが、高齢者と犬が一緒に暮らすことについて実証された研究を見ていきましょう。
【科学的に実証されました!】高齢者と犬の共生を考える

最後の更新: 28 9月, 2020

飼い主の年齢に関係なく、犬を飼うと家庭内は明るくなり、運動量も増えます。犬はエネルギッシュで、忠実で、愛情深く人と一緒にいることを好むため、孤独感を和らげてくれる存在でもあります。このため、高齢者と犬はとても相性のいい関係だと言えるでしょう。

それでも実際に生活の中で犬を飼うことのメリットを科学的に実証したものに触れることは殆どありません。実は、高齢者が犬を飼うことで得られるメリットは非常に大きいのです。今回は高齢者と犬の共生について考えていきましょう。

 

高齢者と犬に関する縦断的研究

最初にご紹介する研究は、高齢者の健康状態と日常生活におけるペットの存在との関係を調べたものです。

  • サンプルは1,000人を超える65歳以上の高齢者。ペットを飼っている人、飼っていない人に分類。
  • 研究者は、人工統計学的データと日常の行動の両方に関する質問を含む電話によるアンケートを実施。階段昇降、一定距離の歩行、激しい運動、前屈、特定の体位などを含む日常生活動作(ADL)の評価スケールを使用。この他にも様々なトピックに基づいて、各人の心理的幸福度を数値化。
  • その後、1年間に渡り高齢者を追跡調査。

結果は啓蒙的なものでした。家に犬や猫のペットがいると、高齢者のADLは有意に高まることが認められました。

アクティブなライフスタイルを維持することで、転倒や骨折の可能性が減ることは想像しやすいと思いますが、活発でいることでさらに加齢に伴う骨や筋肉の衰えを遅らせることもできるのです。犬を飼っていると散歩や遊びなどで運動量が増え、ペットとあらゆる触れ合いが生まれるのです。大したことではないように思えるかもしれませんが、このような毎日の運動や触れ合いが高齢者にとって大きなメリットがあるのです。

高齢者 犬

高齢者と犬 ~認知症と介護犬~

2つ目の研究は2008年に発表されました。この研究では動物療法と高齢者の認知症の発症との関係に焦点が当てられました。

  • サンプルは認知症の高齢者54人の無作為グループ。半分の患者には通常の治療を、残りの半分の患者には通常の治療と動物介在療法(AAT)を週に10階組み合わせた治療を実施。
  • その後、10週間に渡り、全患者の経過を記録。認知機能障害、焦燥感や攻撃性の有無、認知症に伴ううつ状態など、様々な項目を数値化し観察。

通常の治療のみを受けた対照群では研究期間終了時に上記の項目が大幅に増加(悪化)したのに対し、動物介在療法を受けたグループでは、症状は一定で、認知症の悪化は認められませんでした。

もちろん、認知症に対して劇的に効果のある治療法はありません。しかし、動物の存在で認知症患者の症状が維持できたという事実は大きな進歩です。これらの結果から、動物療法が高齢者の精神神経変性の症状を抑制するのに役立つことがお分かりいただけると思います。

複数の研究、一つのアイディア

このような研究は他にも数えきれないほど行われてきました。2014年の研究では、犬を飼っている高齢者は、動物を飼っていない高齢者よりも平均で12%多く運動をしているという結果が出ています。

しかし、高齢者とペットとの相互作用は単に運動量の増加だけではありません。犬と同じように人間は社会性のある動物です。実際、たとえ他の種の動物であっても、人間は仲間を必要とする生き物です。目まぐるしい速さで動く社会から距離を置かざるを得なくなってしまう高齢者は多いものです。

悲しいことに、高齢者と立ち止まっておしゃべりをする時間を意識的に作る人はあまりいません。しかし、犬は忠実で気配り上手な生き物。そして何よりも、犬は人間の感情を理解し、それに応じて反応する方法を知っているのです。

高齢者 犬

このように、犬が孤立、神経変性疾患、身体的衰えなどの症状を緩和してくれる素晴らしい仲間であることを証明する科学的な研究は多くあります。興味のある方は是非、ご自分でも研究を行ってみてください。参考になる科学的研究は非常に多く見つかるはずです。


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